学会の沿革
日本歯科医学教育学会(以下「本会」という。)は1982年(昭和57年)に設立された。同年8月22日、118名の参加者が日本青年館(東京)で開かれた本会設立総会に出席し、上程された役員構成案、学会会則案、昭和57年度予算案及び昭和58年度総会開催案を承認した。設立総会後、第1回学術大会が同日開催され、河村洋二郎初代会長が「わが国の歯科医学教育を考える~その問題点と対策についての考察~」と題し、基調講演を行った。その後、116名が入会し、初年度会員数は234名であった。
本会の設立趣意書には次のように記されている。
「科学の進歩、社会の変化、更に歯科医学研究並びに歯科医療の急激な進展に対応して、歯科大学における教育は、その内容、カリキュラム、教育方法、教育施設、教員の再教育など、検討、改善すべき多くの問題をかかえている。また、わが国の歯科界には今日歯科医師のための組織だった生涯教育・学習制度が確立されていない。歯科医療に対する社会の批判がいろいろの面できわめて強い今日、歯科医学教育の向上と充実に努めることが愁眉の急である。このためにも広い視野に立って歯科医学教育全般を検討し、教育内容、教育方法あるいは教育効果の評価などについて歯科医学担当者が相互に情報を交換し、研究し、討議する必要がある。諸外国には、歯科医学教育についての学会がつとに設立されている処が多く、その学会の場を介して歯科医学教育問題が活発に討議され、よりよき教育のための対処が具体的に推進されている。このような世界情勢におくれをとることのないよう、さらにわが国の歯科医学教育および歯科医師の生涯教育を系統だてるためにも歯科医学教育の諸問題を客観的に研究し、具体的施策を考える場として日本歯科医学教育学会を設立するものである。」
上記の精神は、1982年(昭和57年)8月23日施行の本会会則第2条に、「本会は歯科医学ならびに関連領域の教育向上、充実、発展に寄与することを目的とする。」として謳われている。なお、本会機関誌の創刊は1986年(昭和61年)であるが、1982年(昭和57年)から1997年(平成9年)までは、別途、学会ニュースを計19回発行した。
2001年(平成13年)度に設立20年目を迎え、同年6月25日に創立20年記念式典を学術総合センター(東京)にて開催し、28名の本会功労者を表彰した。
2002年(平成14年)度に学術賞制度を導入し、教育システム開発賞および奨励賞を設置した。
2005年(平成17年)度より、日本歯科医学会の専門分科会に加入した。
2006年(平成18年)6月16日、設立25周年を迎え、記念式典および名誉会員の推薦と学会シンボルマーク・ロゴマークの発表を行った。
2007年(平成19年)度の役員構成は、理事長以下、副理事長2名、常任理事16名、監事2名、理事56名、評議員270名とし、会員数は1702名となった。従来から設置されていた4つの常置委員会と5つの各種委員会に加えて、新たに5つの各種委員会を設けた。
2008年(平成20年)度には会員数が1,800名に近づいた。学術大会運営に関する内規・役員選出に関する規程・表彰制度規程および細則の改訂を行い、大所帯となった本学会の充実を図った。また、超高齢者社会への対応教育を調査する目的で、訪問歯科診療についての卒前教育に関する調査を開始した。さらに国際学術大会への教育関係発表者に対する支援事業として国際学会研究発表奨励賞を新設した。また、これとともに教育文化賞も新設した。
2011年(平成23年)度に創立30周年を迎え、7月15~17日に日本歯科大学生命歯学部にて第30回日本歯科医学教育学会総会・学術大会および記念大会(大会長:住友雅人)が開催された際に、30周年記念関連事業として、記念講演2題、記念式典・記念コンサートを挙行した。
2016年(平成28年)4月より、本学会の法人化にむけた具体的な検討及び作業を開始し、2019年(平成31年)1月に一般社団法人としての登記手続きが完了した。
学会の特徴と活動
本会は、歯科医学教育を総合的に研究して具体的施策を提言している、わが国唯一の学会である。また、1998(平成10)年度に機関会員制度を導入したことにより、わが国の歯科大学・歯学部が機関として本会に加盟することになった。2004年度(平成16年度)には、全ての歯科大学・歯学部が本会に加盟した。さらに、本会は平成12年度以降、歯科医学教育者を対象にワークショップを毎年主催し、本会の目標の一つである教育改善並びに教育能力の開発・向上に努めている。2000年(平成12年)7月4日・5日に開催された第1回ワークショップ(札幌)には、全国21大学から志ある参加者が集い、「卒前初期教育のカリキュラム・デザイン」をテーマとして熱心な討論・発表が繰り広げられた。
また本会は、歯科大学・歯学部長会議とともに国際歯科医学教育学会連盟(IFDEA)に加盟しており、国際的視野から教育情報を発信し収集している。国際歯科研究学会(IADR)の学術大会と併催されるIFDEA役員会及び総会には、本会から代表者を毎年派遣している。こうした本会の極めて特色ある活動は関係 各方面から高く評価され、1994年度(平成6年度)以降、補助金の交付を日本歯科医学会から毎年受けている。
2002年(平成14年)度に本会は学術賞制度を導入し、歯科医学教育の分野において優れた業績を挙げた会員に「教育システム開発賞」及び「奨励賞」を授与して表彰するとともに、歯科医学教育者の育成を図ることとした。第1回の学術賞受賞者は、2003年度(平成15年度)の本会第22回総会・学術大会(長崎)において表彰されている。
2006年(平成18年)4月からの歯科医師臨床研修必修化に併せて、歯科医師臨床研修指導歯科医講習会を開催している.また,国家試験・共用試験委員会は各大学へアンケート調査を実施し、歯科医師国家試験出題基準と歯学教育モデル・コア・カリキュラムの整合性について検討している。
2006年(平成18年)6月に、歯科医学教育白書の第1号を発行した。
2007年(平成19年)度から、医療コミュニケーション・ファシリテータ養成セミナーを開催し、その後も継続的に毎年行われている。
2009年(平成21年)度、歯科医学教育者ワークショップは第10回を数えるまでに至った。また、大学歯学部・歯科大学における同僚等による授業評価の調査、「国家試験出題基準」と「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」および「歯科医学教授要綱」のすり合わせ、2008年版歯科医学教育白書の発刊などが行われた。
2010年(平成22年)度には、第1回歯科医学教育者のためのワークショップ(新富士研)を開催、第103回歯科医師国家試験に関する受験生へのアンケート調査の実施、第103回歯科医師国家試験に関する教員へのアンケート調査の結果報告を行っている。
2011年(平成23年)度には、各種ワークショップ、講習会として、歯科医学教育者のためのワークショップ(新富士研)、医療コミュニケーション・ファシリテータ養成セミナー、歯科医師臨床研修プログラム責任者講習会、訪問歯科診療に必要な倫理感に関するワークショップを開催した。また、第104回歯科医師国家試験に関するアンケート調査の実施、報告書の作成を行った。
2011年(平成23年)度末現在、4つの常置委員会(総務委員会、経理委員会、機関会員委員会及び編集委員会)を設置し、本会の目的達成のために着実な活動を続けている。また、9の各種委員会を設け、歯科医学並びに関連領域の教育向上、充実および発展のための積極的な活動を行っている。機関会員委員会は我が国の全29大学歯学部・歯科大学が学会会員として参加している。教育国際化推進員会は諸外国の歯科教育関連の学会へ積極的に参加している。教育能力開発委員会は歯科医学教育者に対するワークショップの開催を行っている。教育評価委員会は、歯科医師国家試験に関するアンケート調査を実施し、調査結果を作成している。卒前教育委員会では歯科医学準備教育の現状と在り方について検討を重ね、卒後教育委員会では臨床研修に関する講習会を開催している。倫理・プロフェッショナリズム教育委員会も倫理感に関するワークショップを開催している。広報委員会は学会HPの充実化を、白書作成委員会は歯科医学教育白書の作成を、機構検討委員会では、委員会ミッションの明確化や選挙制度についての協議を行っている。
年表
項目 | 概要 | |
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1982年8月 | 8月22日:本会設立 | 日本青年館(東京)において、本会設立総会(118名参加)・第1回学術集会を開催 |
1982年 | 学会ニュース発刊 | 1997年までNo.1~19を発行 |
1986年3月 | 日本歯科医学教育学会雑誌(本会機関誌)創刊 | 第1巻第1号を発行 |
1989年7月 | 第1回ワークショップ開催 | 大阪において「臨床系基礎実習の問題点について」として開催 |
1990年11月 | 日本歯科医学教育学会雑誌が年度2回の発行となる | 第6巻第1号発行 |
1991年2月 | 第6巻第2号発行 | |
1991年8月 | 第2回ワークショップ開催 | 名古屋において「臨床系基礎実習の問題点について」として開催 |
1998年7月 | 機関会員制度を導入 | わが国の歯科大学・歯学部が機関として本会に加盟した(15校) |
2000年7月 | 第1回歯科医学教育者ワークショップを開催 | 2009年(第10回)まで開催 |
2001年6月 | 創立20年記念式典開催 | 第20回総会・学術大会(東京)において、本会功労者(28名)を表彰 |
2002年7月 | 学術賞制度を導入 | 歯科医学教育の分野において優れた業績を挙げた会員に、「教育システム開発賞」及び「奨励賞(現 優秀論文賞)」を設置 |
2003年7月 | 第1回学術賞受賞者表彰 | 第22回総会・学術大会(長崎)において表彰 |
2004年5月 | 機関会員が29機関となる | わが国全ての歯科大学・歯学部が本会に加盟(29校) |
2005年4月 | 日本歯科医学会専門分科会に加入 | |
2005年5月 | 日本歯科医学教育学会雑誌が年間3回の発行となる | 第21巻第1号発行 |
2005年7月 | 学生シンポジウム開催 | 第24回総会・学術大会(徳島)の際、学生部門が設けられ、シンポジウム「歯学部学生からみた歯科医学教育」を開催 |
2005年8月 | 第21巻第2号発行 | |
2005年12月 | 第21巻第3号発行 | |
2006年3月 | 歯科医師臨床研修制度プログラム責任者・副プログラム責任者のためのワークショップ開催 | 2008年まで4回開催 |
2006年6月 | 創立25年記念式典開催 | 第25回総会・学術大会(仙台)において開催 |
学会シンボルマーク・ロゴマーク制定 | ||
2006年12月 | 歯科医学教育学書の発行 | 2005年版歯科医学教育白書を発行。以後3年おきに発行 |
2007年4月 | 新委員会の設立 | 歯科医学領域の教育向上、発展のため新たに5つの各種委員会を設立 |
2007年12月 | 医療コミュニケーション・ファシリテータ養成セミナー開催 | 2017年現在、11回開催 |
2008年7月 | 学術賞の新設 | 国際学会研究発表支援事業として「国際学会研究発表奨励賞」、若手教育者を対象に「教育文化賞(現 歯学教育優秀賞)」を設置 |
2008年8月 | 歯科医師国家試験に関するアンケート調査の開始 | 歯科大学学長・歯学部長会議からの依頼により、第101回歯科医師国家試験に関する教員へのアンケート調査を実施 以後、2017年現在、第110回歯科医師国家試験まで受験生ならびに教員へのアンケート調査を実施 |
2010年12月 | 歯科医学教育者のためのワークショップ開始 | 2019年現在、第9回まで開催 |
2011年7月 | 創立30周年記念式典開催 | 第30回総会・記念大会(東京)において開催 |
2014年8月 | SEAADE(東南アジア歯科医学教育学会)と協定締結 | 第25回SEAADE(マレーシア・クチン)において調印式が行われた |
2015年8月 | ADEE(ヨーロッパ歯科医学教育学会)と協定締結 | ADEE2015(ハンガリー・セゲド)において調印式が行われた |
2016年3月 | ADEA(アメリカ歯科医学教育学会)と協定締結 | ADEA2016(アメリカ・デンバー)において調印式が行われた |
2016年4月 | 新委員会の設立 | 規程・規約策定・法人化検討委員会、多職種連携教育委員会を新たに設立 |
日本歯科医学教育学会雑誌を電子ジャーナル化 | 第32巻第1号より電子ジャーナル化し、学会ホームページに掲載 | |
メールマガジンの発行を開始 | ||
2016年7月 | 創立35周年記念式典開催 | 第35回総会・学術大会(大阪)において開催 |
2018年8月 | 日本歯科医学教育学会雑誌をJ-STAGEに登録 | 第34巻2号から、J-STAGEへの掲載を開始 |
2019年1月 | 法人化 | 一般社団法人日本歯科医学教育学会としての活動を開始 |