理事長挨拶
一般社団法人
日本歯科医学教育学会
理事長 田口 則宏
令和7年8月より本学会理事長を拝命することになりました。これまで築き上げてきた本学会の歴史と伝統を継承し、我が国の歯科医学教育、ひいては医療者教育のさらなる発展に貢献していけるよう、精一杯努力してまいります。皆様のお力添えを、どうぞよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人日本歯科医学教育学会は、「わが国の歯科医学教育および歯科医師の生涯教育を系統立てるためにも歯科医学教育の諸問題を客観的に研究し、具体的施策を考える場として日本歯科医学教育学会を設立する」との趣意のもと、1982年(昭和57年)に設立されました。この精神は、現在の定款第2条にも引き継がれ、「当法人は、歯科医学並びに関連領域の教育向上、充実及び発展に寄与することを目的とする。」として謳われています。本学会はこの精神を礎とし、以来40年以上にわたって我が国の歯科医学教育の発展、充実に尽力しています。
歯学または歯科医療は、歴史的にも手先の器用さや技術の熟練度を求められることが多く、社会からも職人的な視点でとらえられることが多い職種です。そのため、歯科医師養成課程における教育内容や教育体系も技能(スキル)修得を重視した体制となっていました。一方で、痛い、怖いといった歯科医療に対するネガティブな印象を持たれる市民も多く、より安心、安全な医療を提供するためにコミュニケーション能力といった態度教育も充実しつつあります。加えて近年では情報科学技術が急速に進展し、AI技術などの教育における利活用も重要視されています。市民の皆様の歯科医療に対する要求や期待に応じて提供する医療も変化していきます。それに併せて、その医療を提供できる歯科医療人材の育成も極めて重要となっていきます。本学会は、常に市民の皆様や学習者の視点を忘れることなく、より良い歯学教育の構築に貢献できるよう活動してまいります。
本学会は現在、約1,500名の個人会員、29校の機関会員、8社の賛助会員が所属しております。また、12の委員会、4つの部会とともに複数の特命委員会を設置し、歯学教育の発展、充実に関する任務に当たっています。本学会の重要な使命の一つに歯科医学教育者の育成がありますが、私はこれまで9年間にわたって教育能力開発委員会委員長を担当し、主に富士研(歯科医学教育者のためのワークショップ)の企画・運営に携わってきました。歯学教育者の学びの場としての国内最高峰である「富士研」の伝統を引き継ぎ、時代に応じた新しい教育的テーマを取り入れるとともに、コロナ禍における学びの場の在り方についても考える機会を頂きました。この経験を通じて学んだことは「常に好奇心を持ち続けること」、「常に前向きであること」、そして何よりも「人のつながりを大切にすること」です。全国の歯学教育者とつながる機会を頂き、あらゆる意味で大変貴重な財産となっています。本学会では、このような会員同士が学びあえる場を重要視し、様々な機会を設けていきたいと考えています。
本学会は2019年度に一般社団法人化し、社会的な役割を担う機会が増えてきました。文部科学省関連事業としては令和4年度改訂版歯学教育モデル・コア・カリキュラムの作成作業への協力、厚生労働省事業としては歯科医師臨床研修活性化推進特別事業におけるプログラム責任者講習会の開催、歯科医師臨床研修指導歯科医講習会講師養成研修会の開催、指導歯科医資格更新要件に資するeラーニング教材の開発などがあり、それぞれ特命委員会等を設置して対応に当たっています。このような社会的な貢献も本学会の重要な使命の一つであり、さらに積極的に関わっていく所存です。
歯学教育に関わる多くの皆様とともに、次世代を担う歯科医療者の育成に様々な面から貢献していける学会を目指してまいります。皆様のご理解とご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和7年10月1日